協会活動報告と会員情報
【BtoBコミュニケーション研究会】「オカムラ× 日立ソリューションズ「ワークライフバランスセミナー」」
2024-06-12
「クリエイティビティを高めるこれからの働く場と働き方」を開催
さる6月12日午後3時から、東京都千代田区紀尾井町のホテルニューオータニガーデンコート3階のオカムラ共創空間「Open Innovation Biotope “Sea”」で、㈱オカムラと㈱日立ソリューションズの協力により、BtoB企業・ワークライフバランスセミナー「クリエイティビティを高めるこれからの働く場と働き方」を開催。約30名が参加しました。講師3人による講演とパネルディスカッションの後、㈱オカムラのオフィス「WeLabo」の見学会と交流懇親会が行われました。主催は一般社団法人日本BtoB広告協会・BtoBコミュニケーション研究会。
日本の産業界が抱える課題の一つとして、職場環境のあり方が問われています。デジタル技術の発達により、新型コロナウイルスの感染拡大以降、ハイブリッドワークが普及したが、一方で、社員が会社に集い、Face to Faceで業務を進めることの重要性も見直されています。「働く場」として大事なこととは何か。社員がクリエイティビティを発揮し“働きがい”を持って働くための「働く場」と「働き方」が一層求められています。そこで今回、働き方と働く場について40年以上研究してきたオフィス家具のトップメーカー㈱オカムラと、社内外のワークスタイル変革に取り組み、ITで企業の働き方改革を支援する㈱日立ソリューションズの2社から3名の講師を迎え、「働くこととは何か、働くことに寄与する空間はどうあるべきか」のテーマでのセミナー開催となりました。第1部で講演、第2部でパネルディスカッションが行われました。
〔第1部・講演〕クリエイティビティ向上へ、事例を交えての3つの報告
冒頭、日本BtoB広告協会の太田康生副会長(㈱オカムラマーケティング本部プロモーション部部長)が挨拶し、「本日は、オカムラと日立ソリューションズが培ってきたそれぞれの知見から、3人の講師とともにディスカッションしていきたい。本日利用するこの会場 “Sea”も様々な知見を結合することによってイノベーションにつながるクリエイティビティを高める場所であり、皆様にとって新たな発見の場となればありがたい」と語りました。そのあと、㈱オカムラワークデザイン研究所の森田舞さん、㈱オカムラスペースデザイン部の佐々木基さん、㈱日立ソリューションズ経営戦略統括本部エグゼクティブエバンジェリストの伊藤直子さんの順で講演が行われました。3講師の講演要旨は次の通りです。
森田講師「2024年のオフィス、働き方9つのトレンド」
本日は、2024年における日本の「“はたらく”を取り巻くトレンド」についてお話ししたい。その前に、なぜ「はたらく」ことのトレンドを考える必要があるのか。当社が実施した「経営者にとって関心がある経営課題とは」の調査で、「優秀な人材の確保」が94%、「従業員の生産性の向上」が92%などとなっている。また、「はたらく」ことに関する社会的課題として、次の3つが上げられた。
1つ目は「人口減少」で、優秀な人材をいかに確保するかの「LIFE」に関する課題。
2つ目は「健康・ワークライフバランス」で、健康にストレスなく暮らし続ける「WELL」に関する課題。
3つ目は「テクノロジーの急速な普及」で、AI、ロボット、自動化などの「COMMUNICATION」に関する課題です。これらの課題ごとに、9つのトレンドについて述べました。
1つ目はLIFEに関わる課題、「働きがいを高める=充足感や達成感が新たな価値に」です。「働きがいを感じる仕事を増やそうとしているか」について聞いたアンケート結果では、「実践している」は17.0%、「実践しようと考えている」は44.8%。こうした人たちに、エンゲージメントを高める環境づくりを整備するなどの支援が必要となります。
2つ目は「仕事からライフワークへ=自分の強みを見つけ、伸ばす」です。「自律的に仕事を自分で生み出して働く」ことを「実践している」は20.9%、「実践しようと考えている」は43.2%で、これらもサポートが必要です。
3つ目は「キャリアを柔軟に=生き方の選択肢を増やす」です。「副業」を理解している人は91.7%に対して、実践している人は21.2%など差があり、実践にはリスキルや学び直しなど会社のサポートが必要です。これらの課題に対して、オカムラは、個室やブースのほかに、話しやすい環境を作り出す会議室などを提供しています。
4つ目はWELLに関する課題、「利他と多様性=みんなが公平に感じる状態に」です。多様性に配慮している企業に関するアンケート調査では、パフォーマンスが高いワーカーが多い企業では、各種施策に積極的に取り組んでいることがわかります。これらに対して、オフィス環境の整備が行き届いているかが課題です。
5つ目は「ストレスの適正化=自分なりの“適度”な負荷を設定する」です。健康に働くことへ関心を寄せている人の割合は92.7%と従業員の関心の高いワードとなっています。
6つ目は「使いやすさの工夫=優しさ、やわらかさ、わかりやすさ」です。オカムラは、ABW(Activity Based Working)の考え方を重視し、仕事の内容やコミュニケーション、体調など多様な状況に合わせて働く場所を選べるツールやシステムを提供しています。
7つ目は「チームが主役=能力を引き出し、パフォーマンスを最大に」です。チームで作業することで気分が高まる人の割合は高いです。
8つ目は「以心伝心=あいまいな仕事を互いにカバーする」です。阿吽の呼吸でお互いに仕事をカバーしあう環境が必要とされています。
9つ目は「AIと一緒に働く=最新技術を味方につける」となっています。
佐々木講師「キーワードは、ABW・TBWと共創空間」
今日のセミナーのテーマである「クリエイティビティを高めるこれからの働く場と働き方」について「ABW・TBW」と「共創空間」の2つの点から話をしていきたい。
まずABW(Activity Based Working)だが、これは1990年代にオランダで生まれたワークスタイルだ。多様な環境からワーカーが働く場所を自由に選ぶ。これにより、生産性や創造性向上への効果が期待できる。ABWに関する調査で、利用場所が“適度にばらついているグループ”のクリエイティビティが高いという調査結果がある。オフィスでのベースとなる居心地がよく働きやすい、長時間滞在できる環境と、働き
方に合わせた多様な環境を配置することが、クリエイティビティの高いワーカーの働き方を支援すると言える。また、ABWの一形態としてTBW(Team Based Working)を提唱している。リアルなコミュニケーションを起こすことで仲間との関係性を深め
ていく働き方で、イノベーションを起こすためにも「チーム」は重要だ。そのための支援として、グループテーブル、情報共有ウォール、プロジェクトルームなど、チームの働き方に合わせた環境を提供し、その組み合わせでチーム力を上げる提案をしている。
次に、なぜ、「共創」が必要なのか。マーケットが成熟した今、モノは個人の“自らの価値観”で選ぶ時代になっている。価値を提供するには社会的課題解決への機運の高まりなどがあり、一企業での対応には限界がある。そこで「価値共創」の必要があり、画一的でない価値観を有する多様なステークホルダーと創造的対話を継続的に実施する必要がある。共創空間の役割として、「課題について上下関係なくフラット
に話し合えること」「組織の垣根を超えて様々な知見を出し合えること」「失敗を許容し、試行錯誤を繰り返しながら答えを目指すこと」などがある。
伊藤講師「日立ソリューションズの働き方の取り組み」
日立ソリューションズは日立グループのデジタル事業の中核を担っており、持続可能な社会の実現に向けてSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を推進している。私自身は2015年から働き方改革のプロジェクトに入り、自社の改革推進とともに、自社での取り組みを生かして企業の働き方改革をITで支援する事業に携わっている。
まず、人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関するある調査を紹介したい。「これまで重視してきた能力」と「100年時代に求められる能力」について、「経験をもとに着実に仕事を行う能力」が「これまで」は67.3%、「100年時代」は
46.3%であるのに対し、「柔軟な発想で新しい考えを生み出すことのできる能力」は「これまで」の20.3%に対し、「100年時代」は53.5%と高く、「特定の分野における専門的・技術的な能力」は「これまで」の38.9%に対し、「100年時代」は47.1%と高い。
また、キャリア形成のイメージは、これまでは「山を登るイメージ」であったが、当社の若手ヒアリングでは「成長し、自分自身が大きくなるイメージ」となっている。つまり、キャリアへの意識は「ポジションアップから自己成長へ」と変化している。
当社は、2016年に全社運動として「働き方改革」を開始し、テレワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方や残業削減などを推進してきた。2020年から感染対策のため「全社員原則在宅勤務」を実施し、2022年7月に「原則在宅勤務」は解除され、ニューノーマルへと移った。クリエイティビティを高めるには、「心地よい空間」「心理的安全性」「頭を広げる」「多様なものに触れる」「挑戦できる」などが必要だと思うが、これらについて皆様と一緒に考えたい。
〔第2部・パネルディスカッション〕クリエイティビティを高めるには
3人の講師による講演の後、3人をパネリストとしてパネルディスカッションが行われ、石橋氏の参加者の皆様にはクリエイティビティを高める場づくりにチャレンジしていただきたいという言葉とともに本会は幕を閉じました。